寄席わらし

古典落語と新作落語 — まくら・本題・サゲという型

落語の一席は、たいてい同じ形をしています。世間話のような導入から始まり、いつのまにか物語に入り、最後にひとひねりして終わる。この型を知っておくと、初めて聴く噺でも迷子になりません。

まくら — 物語に入る前の助走

演者が座布団に座って、まず始めるのが「まくら」です。その日の天気、最近の出来事、客席の様子。一見すると雑談ですが、まくらにはいくつも役割があります。

ひとつは客席の温度を測ること。どんな客が来ているか、どのくらい笑う客席かを、演者はまくらのあいだに探っています。演目をその場で変えることさえあります。

もうひとつは、本題に必要な前提を渡しておくことです。江戸時代の噺には、今では通じない習慣や道具が出てきます。それをまくらのうちに笑い話として入れておけば、本題で説明する必要がなくなる。「与太郎という人物がいましてね」と紹介しておけば、本題でいきなり与太郎が出てきても客席は戸惑いません。まくらは前置きではなく、仕込みです。

本題、そしてサゲ

まくらから本題へ移る境目には、はっきりした合図がないことがあります。気づけば物語が始まっている——この移り方の滑らかさも芸のうちです。

そして落語は「サゲ(オチ)」で終わります。最後の一言で話をひっくり返して、演者は頭を下げる。サゲにはいくつもの型があり、言葉の音をかけたもの、聴き手が少し考えて意味に気づくもの、しぐさで見せるものなどがあります。

初めてだと「今のがサゲなのか」がわからないことがありますが、心配は要りません。演者が頭を下げたら終わりです。そこで拍手をすれば間違いありません。

古典と新作

江戸から明治にかけて成立し、代々受け継がれてきた噺を「古典落語」と呼びます。長屋の住人、若旦那、与太郎、大家。舞台は江戸の町で、登場人物の型もおおむね決まっています。

これに対して、現代に作られた噺が「新作落語」です。舞台は現代で、会社やコンビニやスマートフォンが出てきます。演者自身が作者であることが多く、その人しか演じない噺も少なくありません。当サイトの公演にも「新作」と銘打った会がしばしば登場します。

どちらが上ということはありません。古典を得意とする演者、新作ばかりを作る演者、両方をやる演者がいて、それぞれに客がついています。初めて聴くなら、現代を舞台にした新作のほうが入りやすい、という人もいれば、古典の様式そのものが面白いという人もいます。

同じ噺が、演者ごとに違う

落語で面白いのは、同じ演目でも演者によってまったく違うものになることです。台本があってそれを再現するのではなく、師匠から口伝えで教わったものを、自分の体に合わせて作り直していく。だから同じ「芝浜」でも、聴き比べると長さも人物像も変わります。

寄席では持ち時間の都合で刈り込んだ形が演じられ、独演会では同じ噺がじっくり演じられる、ということも起こります。同じ演者で寄席と独演会の両方を聴くと、この違いがよくわかります。

ひとりの演者を追いかけると決めたら、当サイトの芸人さがしから出演予定をまとめて確認できます。気になる演者は「贔屓」に登録しておくと、その人の出る会だけを絞り込めます。

演目は当日までわからないことが多い

最後にひとつ。落語会の告知に演目が書かれていないことは珍しくありません。演者はその日の客席を見てから何を演じるか決めることがあるからです。「テーマ」や「特集」が決まっている会でも、具体的な演目は当日の高座で明かされる、ということがよくあります。

当サイトが演目まで載せていないのは、公表されていないことが多いからです。何がかかるかわからないまま座る——それも寄席演芸の楽しみのひとつだと思っています。